「さてとお嬢ちゃん、ここまで来たからには素直に話してもらえるかのう?」
「……あいつの言うとおり私は暗殺者だ。もっとも今は組織を裏切り、逃亡中
の身だがな。」
女性はコレスの問いに淡々と答える。
「今までは私も暗殺者としての生き方に何の疑問も持たなかったのだが、最近
自分の生き方に疑問を持ち始めたのさ、今までの私は人形ではないのかって。そ
うして気付けば逃亡していた……ふっ、愚かな話さ。」
「…………。」
コレスもイヴも女性の話に言葉が出ない。どう答えれば良いのかさえもわかり
かねているようだった。
「これでわかっただろう?私と出会ったことは忘れてくれ。」
「貴方はどうするつもりなの?」
「そうだな、とにかく奴らに殺されないように逃げつづけるつもりさ。」
「……それでいいのか?逃げつづけても何も解決はせんぞ。」
背を向け去ろうとしている女性にコレスは声をかける。
「このまま逃げつづけても、決して人間として生きられるとは思えんぞ、暗殺
者から逃亡者へと変わるだけじゃないのかのう?」
「……しかし、私にはこうするしか……。」
「それなら私達の仲間にならない?このまま逃げ続けるよりずっといい結果が
生まれると思うわよ。」
「私は組織の裏切り者なのだぞ、私がいればふたりにも迷惑がかかってしまう。」
女性はこの誘いに対して躊躇していた。この場に留まればふたりに迷惑がかか
るのは明白だったからである。その気持ちを知ってか知らずかコレスは。
「なあに、多少の障害がないと、人生はつまらんものじゃよ、気にする必要は
ないぞ。」
「そうよ、一人よりも二人、二人よりも三人いた方がきっと道も開けるわよ。」
「…………。」
女性は信じられないというような顔をしていた。自分のせいで命を狙われたに
も関わらず、仲間として迎え入れようとしているお人好しがいることに。だから
こそ、女性はこの二人を信じてみる事にした。自分を人形ではなく、人として見
てくれるこの二人に……。
「……私がいても、迷惑じゃないのか?」
「仲間はたくさんいたほうが楽しいのよ。」
イヴが手を差し伸べ答える、そして。
「そう言えば貴方の名前を聞いていなかったわね。」
女性はやや躊躇しながらもイヴの問いに対し。
「私の名前は……ヤシャ……ヤシャ・クレバーだ、迷惑でなければこれからも
よろしく頼む。」
ヤシャはイヴの手をしっかり握り返し、そう答えた。
「それでは改めまして。私の名前はイヴ・トゥ・ナイトよ、よろしくね。」
そして、マントをなびかせながらコレスも答える。
「ワシの名前はコレス=テ=ロールじゃ!これからもよろしくな、お嬢……い
や、ヤシャ。」
暗殺者という人形だった女性は今、人間としての第一歩を踏み出し始めた。