僕等が仲間になった理由(わけ)



 時は夜。王都へと続く街道。要所要所に儲けられた休憩所で、一人の青年が眠っている。

傍らに大剣と鎧が置いてあるので、おそらく剣士なのだろう。

 ふと、辺りから虫の鳴き声が消える……。と同時に青年が目を覚ます。青年は落ち着いた様子で剣を取って構え、こう言った。

「ったく、これで何度目だ? いるのは分かってんだ。出てこいよ!」

 青年の声に答えるかのように、街道脇の茂みから何人かの武装した男達が現れた。俗に言う野盗山賊の類だ。

「分かってんなら話は早い。手前ぇがする事も分かってるよな?」

 リーダーなのだろうか、中年の男が青年に問い掛ける。『金目の物を置いていけ』と言いたいのだろう。

だが、青年はその脅しに臆することなく言い放つ。

「ああ、戦神の名の元に貴様らをぶちのめした後、路銀の調達だな」

「舐めた口効くじゃねぇか、坊主……。おい、やっちまえ!」

『へい!』

 掛け声と共に、青年に切りかかる野党たち。互いに暗闇の中と言う条件なのだが、青年は野盗の攻撃を軽々とかわしている。最も、青年の攻撃も半分程度しか当たっていないが。

(しかしこいつ等、やけに装備がいいな……)

 野党たちの装備は、古ぼけたダガーやショートソードではなく、それなりに手入れのされたブロードソードや、バスタードソード、鎧もボロボロのソフトレザー等ではなく、綺麗なハードレザーだ。

 先程青年がぼやいていた様に、この国は政情が不安定で野盗山賊が多い。大規模な反乱軍まである程だ。

当然野盗同士の『シノギの削り合い』が起こる訳だが、この程度の実力で、この装備が買える程稼げるとは思えないのだ。

(ま、んなこたどうでもいいが……)

 青年がまたもや野党の攻撃をかわした時、朗々たる声が響き渡った。

「万能なるマナよ、安らかなる眠りをもたらす雲となれ……。『スリープ・クラウド』!」

 青年と野党達を、薄い雲とも霧ともつかない物が覆い尽くすと、野党の何人かがその場に倒れこむ。

『スリープ・クラウド』……初歩の古代語魔法で、生物を眠らせる魔法だ。初歩ではあるが、対人戦、特に多対一で効果を発揮する魔法だ。味方を巻き込む危険も高いのが傷だが……。

「さあ、どうしますか? 後ろからは僕の仲間も来ていますが?」

 野盗とは、青年を挟んで反対側から、一人の青年が現れる。ソフトレザーにメイジスタッフといった、典型的な魔術師だ。

「ちっ、引き上げだっ!」

 リーダーの指示の元、魔法に耐えた野党達が、仲間を抱えて逃げていく。

「大丈夫ですか?」

「ん? ああ、怪我一つ無い。助かったぜ」

「お安い御用です。襲われている人を見捨てては置けませんしね。僕はウェルズ=マクスウェル。旅の魔術師です」

「オレはリック=ウォルカス。旅の剣士だ」

 互いに握手をして名乗り合う二人の青年。

「だけどウェルズさんよ、何処で寝てたんだい? この辺でまともに寝られそうなのはここくらいだろ」

「呼び捨てで構いませんよ。ここで休むと、今のリックさんみたいに襲われやすいんじゃないかと思いまして……」

「オレも呼び捨てでいいぜ。しかし、流石『仲間が来る』とかハッタリを思いつくだけはあるな」

「いやぁ、ばれてましたか」

「まだ来る気配が無いし、何より仲間がいたら、普通魔術師が先陣切らないだろうしな」

「確かにそうですね。そういえば、リックも王都に行くんですか?」

「ああ、ウェルズもか?」

「そうなんです。で、良かったら一緒に行きませんか? 今日みたいな事が、またあるかもしれませんし」

「その方がいいな。じゃ、宜しく頼むぜ」

「こちらこそ」

 そして二人は、もう一度握手を交わした。

 

 王都の昼下がりを、一人の少女が歩いている。ショートソードにソフトレザーといった、見るものが見れば盗賊かと思う装備だが、その表情は半分……、いや、八割方眠っている。隙だらけで、スリには格好の獲物だろう。

 少女は、今この国に溢れる『冒険者志望』の一人だった。故郷を出て、とりあえず王都に着いた所だ。

(え〜と……、さっき聞いたお店……何処だっけ……?)

 初めに道を聞いてから一時間。『二十分もあれば着く』と言われた場所を求め、少女はひたすら彷徨っていた。

(う〜……又分からなくなっちゃった……。もう一回誰かに聞かなくちゃ……)

 少女は、丁度前を通りかかった女性二人に話し掛ける。

「あの〜、すいません……」

「何かしら?」

「この辺りに、冒険者のお店で『風の……』」

(あれ、『風の……』何だっけ? 『肩叩き』じゃないし……、『きらめき』でもないなぁ……)

「『またたき』亭?」

「質問の内容を聞かれても……」

「かぁさま、それってわたし達も向かってる、『風のささやき』亭の事じゃないですか?」

「そうそう、その場所を教えて欲しいんだけど、分かるかな?」

「え〜と、『風のささやき』亭は……、ここなんだけど……」

「ふみ?」

 少女が横を向くと、目の前に一軒の店があった。看板には『風のささやき』亭と書かれており、入り口の脇には『ウェイトレス急募』の張り紙がある。

「あ、あははははは……、みたいだね」

 三人の間を、冷たい風が吹きぬけた。

「え、え〜と、教えてくれてありがとう。ボクはメルローズ……、メルローズ=ファラ=ヘリオドールっていうんだ。皆はメルって呼んでる」

 照れ隠しに、自己紹介をしてみるメルローズ。

「私はホルン=ブラス。こっちが娘の……」

「ユーフォ=ブラスです。親子で冒険者してるんだ。宜しくね、メルちゃん」

「うん、宜しく。ボクも冒険者を目指してるんだ」

「そうなんだ、一緒にお仕事出来るかもね」

「そうだねっ♪」

「早速お友達が出来るなんて、さすが私の娘ね。立ち話も何だし、中に入りましょうよ」

 そして三人揃って、『風のささやき』亭の中に入る。

「いらっしゃい」

「こちらが冒険者の宿だと覗って来たのですが……」

 やや緊張した面持ちで、ユーフォが店主に訪ねる。店主は三人をざっと眺めて答える。

「……ああ、そうだ。部屋なら開いてるぞ」

「じゃあお世話になろうかしら。後、仕事があると助かるんだけど?」

 今度はホルンが訪ねる。店主は少し考えて答える。

「駆け出しでも出来る仕事があるにはあるが、三人じゃな。それに、魔法を使える奴がいないのは辛いな」

 どうやら店主は、メルローズ達を三人パーティーと思っている様だ。確かにこの状況なら、普通そう思うだろう。

「ボク、精霊さんとお話できるよ?」

「『ウィスプ』くらいは呼べるのか?」

「え、え〜と……『ファイア・ボルト』や『スネア』なら出来るよ」

「……やっぱり、もっと人数を増やした方がいいな」

「仲間になってくれそうな人はいないんですか?」

「一人、どのパーティーにも入っていない奴がいるが、そいつも剣士なんだよ」

「仕方ないわね。所で、この辺りに美味しいお店はないかしら?」

「あ、このお店が美味しくなさそうとかじゃなくて、わたし達、食べ歩きが趣味なんです」

 聞き様によっては失礼な質問をするホルンを、ユーフォがフォローする。

「それは別にいいが……、先にその娘を部屋に連れて行った方がいいんじゃないか?」

『?』

 ホルンとユーフォが疑問符を浮かべる横で、メルローズが立ったまま眠っていた……。

 

 夕暮れ前の王都に、済んだ歌声が響いている。この規模の町にもなれば、吟遊詩人も珍しくない。買い物に行く主婦や、仕事帰りの人々が、ふと足を止めて歌に聞き入る。

 歌が終わると、吟遊詩人の前に置かれた楽器入れに、数枚のガメル硬貨が投げ込まれる。吟遊詩人は誰にともなく一礼すると、硬貨を財布に入れて溜め息をつく。

(やはり、この国は色々と大変な様ですね……)

 その吟遊詩人が別の国を旅していた頃は、今より未熟な腕で、もう少し稼げたものだ。吟遊詩人が立ち去ろうとすると、数人の男達が道を塞いだ。

「よぉ、兄ちゃん。稼ぎはどうだったい?」

「いえ、まだまだ未熟者でして……」

 この会話の間にも、周りの通行人が次々と離れていく。どうやらこの街には、チンピラに絡まれた人間を助けてくれる人間はいない様だ。

(困りましたね……)

 ただでさえ稼ぎが悪そうな街なのに、着いて早々無一文になる訳には行かない。

「では僕はこれで……」

「ちょっと待ちな。稼ぎがどうあれ、ショバ代は払って貰わねぇとな」

 ずらりと吟遊詩人の行く手を遮るチンピラ達。

「え、え〜とですね……」

「ショバ代ってのは、コレじゃ駄目なのかい?」

「!?」

 吟遊詩人とチンピラが気づいた時には、チンピラの首にレイピアが突き付けられていた。

(い、何時の間に……)

「い、いやぁ、これで十分でさ……。それじゃ!」

 言うや否や、瞬く間に逃げ出すチンピラ達。

「いや〜、危ない所をありがとうございます」

「礼なんかいいさ、アタシもああいうのは嫌いでね」

「ははは、そうですか。所で、冒険者の方とお見受けしますが?」

「ああ、そうだけど」

「宜しければ、冒険者の店を教えていただけませんか? この街には今日着いた所なものでして……」

「それはいいけどさ、アンタも冒険者ならチンピラくらい倒してみせなよ」

「格闘戦は苦手でして」

「ま、そういうのもいるだろうけどね。んじゃ案内したげるよ。行こうか」

「はい。……あ、ご紹介が遅れました。僕はミハイル=シェルフェールと言います。ミーシャと呼んで下さい」

「アタシはリズ。ま、宜しくな」

 

「ようやく着いたな。ここが王都か……」

 野党を撃退してから二日後の昼に、リックとウェルズは無事王都に辿り着いた。

「さすが王都ともなると街の規模が違いますね」

「そうだな……。じゃ、『風のささやき』亭だっけか? 行ってみようぜ」

 王都に入ってすぐの所で、『一番近い冒険者の店は?』と聞いた所、『風のささやき』亭の名前が出たのだ。

途中途中で道を尋ねつつ歩いていくと、ものの三十分程で店を見つける事が出来た。早速中に入る二人。

「いらっしゃい」

 店の中には、昼食時だからか冒険者らしき連中が何人か食事をしており、中には昼間からエールを飲んでいる者もいる。

「なぁ、マスター、部屋と仕事はあるかい?」

 いきなり直球の質問を投げかけるリック。店主は二人をざっと眺めて答える。

「部屋は開いてるが仕事はな……。二人だけで出来る様なのは今はないな」

「そうか……。あ、オレA定食な」

「僕も同じ物を。人数を増やせばいいのなら、僕達の様に仲間を探している人はいないんですか?」

「ああ、いるよ。あのテーブルで飯食ってる女三人に、あっちのカウンターでエール飲んでる女剣士に、となりで楽器の手入れをしてる神官だな。皆お前達と同じ駆け出しだから、丁度いいんじゃないか? 七人もいれば、この仕事を回せるしな」

「それじゃあ、早速声を……」

 店の扉が開き、ウェルズのセリフを遮ってドアベルが鳴り響く。店に入って来た男に、自然と皆が視線を向ける。

「あんたはこの間も来てたな。今日はなんの用だい?」

 どうやら、入って来た男と店主は知り合いらしい。

「いや、『冒険者』志望なんだが……、丁度いいパーティーはないか?」

『それならここにっ!』

 先程店主が言ったメンバー全員が声を上げた。

 

 入って来た男……、バッシュと名乗った男をきっかけに、八人はパーティー組む事になった。互いに自己紹介を済ます。各自の技能は以下の通りだ。

 マイリーの神官戦士リック、魔術師ウェルズ、精霊使いで盗賊のメルローズ、野伏のホルン、剣士ユーフォ、軽戦士(本人が呼び名に拘った)リズ、吟遊詩人にしてラーダの神官ミハイル、そして……

「で、バッシュはどんな技術を? 剣士や魔術師には見えませんが……」

「俺か? そうだな……、自分で言うのも何だが、頭の回転には自信があるぞ」

 ウェルズの問いに、答えをぼやかすバッシュ。

「……セージということですか?」

「そんな所だ。悪いが、格闘・魔術共に、戦闘で役に立たない事は、先に言っておく」

 冒険者にとって生死を分けかねないパーティー構成について、このように重大な事を、『一人くらいいっか』ですましてしまったこのパーティーは、将来大物になるかもしれない。

「話は纏まったか?」

「ああ、決まったぜ。全員で組む事にした」

 尚、パーティーリーダーは、逆ジャンケン(負け残り)により、最終戦でリックとユーフォが『十回あいこ』という壮絶な戦いの末、リックに決まった。

「なら、仕事の話だ。最近、この街のあるマフィアが、他のマフィアの策略で潰されたんだ」

「ぶっ!」

 店主の話を聞いた途端、口にしていた飲み物を噴き出すバッシュ。目の前にいたメルローズがびしょ濡れだ。

「うわっ、何をするのさぁ〜」

「わ、悪い……」

 店主はその様子を、ニヤニヤしながら眺めている。反対にバッシュは、店主にジト目を向けているが。

「で、結局そいつらはお縄になった訳だが、これが逃げちまったんだよ」

「本当か!?」

「ちょっとちょっと、悪党が脱走したってだけで、何焦ってんのさ?」

「いや、何でもない。オヤジ、話を続けてくれ」

「……で、その逃げたマフィアが、この街の近くで野盗をしてるらしくてな、捕獲した者に三千ガメルの賞金が出るって話だ。支払いは神聖騎士団……、実質、国内で一番信用できる支払い先だな」

「でも、それなら普通に張り出されてそうな依頼じゃないかしら?」

 ホルンの疑問はもっともだ。この形式の依頼は、殆ど手配書を回すようなもので、目立たせるに越した事は無い。

「いいか、これが神聖騎士団の手落ちだと言う事は理解できるな?」

「……成程ね」

「そういう事か」

 一足先に答えに辿り着いたリズとバッシュが、他のメンバーを置いて納得している。

「地元の人間は分かった様だな。この国では神聖騎士団は人気が高くてな。その騎士団の手落ちを宣伝する様な真似をすると……、店の評判に関わるんだ。これは、真面目な話だからな」

「ま、まあ仕事の内容は分かったよ。オレとしては受けたいな。ここに来るまで、野盗には散々迷惑したんだ」

 他のメンバーからの異論も無く、ここにパーティー初の仕事が始まった。

 

 始まりはしたが、ここはまだ『風のささやき』亭の中。奥のテーブルに移って、作戦会議だ。

「所でリック。さっき言っていたが、この辺りはそんなに野盗が出るのか?」

「ああ、二日に一回は襲われたよ」

「他の皆は?」

 バッシュの問いに、一同は『そんなものだった』と答えを返す。

「その中で、何か変わった奴等いなかったか?」

「う〜ん、そうだなぁ〜……。ボクはちょっと分からないなぁ〜……」

「あ、わたし心当たりありますよ。この街から二日くらい行った所で襲われたんですけど、その人達、何かやたらと装備が良いんですよ」

「……ああ、あったあった。やたらと弱かったわね」

「あっ、そいつらにはオレも襲われた。確かに弱かったよな」

 ブラス親子の意見を、リックがさらに確かにする。

「他にそいつ等の事で覚えている事はないか?」

「え〜と……。確か首領の名前を聞いたのよね。何だったかしら?」

「かぁさま、確かボルシチですよ」

「それって料理の名前じゃなかった?」

 ユーフォの天然ボケに、キッチリと突っ込みを入れるリズ。

「……違う。オルシチだ。」

「そう、それそれ! でも、何でバッシュが知ってるのよ?」

「俺はそっち側の事に詳しくてな……。とにかく、そいつが標的だ」

「意外に、早く見つかりそうですね。まだ明るいですし、今から出ますか?」

「ああ、準備が出来ているならそうしよう。……まずは、ソイツを起こしてくれ」

「え?」

 ウェルズがバッシュの視線を追って隣を見ると、腕を組んで考え事をしている……様に見えて、メルローズがスヤスヤと眠っていた。

 

 『風のささやき』亭を出発して二日、ブラス親子とリック、ウェルズの記憶を元に、大体この辺りだろうといった場所に辿り着いた。

 「よし、もう一度作戦の確認をするぞ」

 バッシュの作戦はこうだ、まず、まだ顔の割れていないメルローズとリズが、囮として街道の休憩所で休み、他のメンバーは側で待機。二人には見張り等は立てずに、眠ったふりをして貰い、野党が出てきたら全員で飛び出す。後はチャンチャンバラバラの戦闘だ。

 夜になり、作戦を実行する。それから二時間が経った頃、リズは殺気のこもった気配が近づいて来るのを感じた。

「来たね……。メル、準備はいい?」

「……」

 呼びかけるリズに、メルローズの返事は無い。

「……メル?」

「……スー……、スー・・・・・・」

 何と、メルローズは本当に眠ってしまっている。普通に起きているだけでも危ないのだから、横になってしまえば眠ってしまうのは、ありえる事だろう。しかし、良く眠る娘だ……。

「……はぁ……」

 起こしてやってもいいが、ここまで来たのに寝ぼけて騒がれては、野盗が逃げてしまうかもしれない。そう考え、リズはそのまま待機していた。

 その頃他のメンバーが潜む茂みでは、ホルンが敵の接近に気付いていた。

「どうやら、かかったみたいね……」

 暫くすると、数人の男達が、リズとメルローズに駆け寄ってくる。頃合を見計らって飛び起きるリズ。

「ちっ! 気付かれたか! でも相手は二人だ、構わねぇ……、行くぞ!」

 リズはまず、眠っているメルローズを起こそうと、頬を叩く。

「起きなメル! 敵が来たよ!」

「むにゅう〜……、母様あと五分……」

   プチィッ♪

 リズの中で何かが切れた。

「起きんかい、コラァァァァァァッ!」

 メルの脳天に拳骨が落ちる。さすがのメルローズも、これで起きた様だ。

「うぅ〜……酷いよぉ〜……」

「起きないアンタが悪い! 目が覚めたらさっさと構える!」

「は、はい!」

 身構えて、敵が来るのを待ち構える二人。戦闘に入ってもリズは当然のように、メルローズも回避に専念して、敵の攻撃をかわし続ける。

 二、三度切り結んだ頃、隠れていたメンバーがようやく追いつく。それを見て、野盗のリーダーの顔が青ざめる。

「バ、バッシュ! 何で手前ぇがここにいるんだっ!?」

「ふ、お前に引導を渡しに来たのさ」

 店主の話に合ったマフィア。潰された方は勿論オルシチだが、潰した方に手を貸していたのがバッシュだった。それに良く見てみれば、以前自分達をあしらった人間ばかり。青ざめるのも当然だろう。

 怖気づいた野盗達は、剣撃に、魔法に、次々と倒れていく。そして最後は……。

「行けっ! 『ファイア・ボルト』!」

 メルローズ渾身の『ファイア・ボルト』が、バッシュの持っていたランタンをぶち壊してオルシチに炸裂する。後には闇夜のカラスの如く真っ黒に焦げたオルシチが残っていた。

「これがボクの実力さ。エッヘン!」

 会心の一撃に酔いしれるメルローズの後ろで、バッシュが呟く。

「……ランタンは弁償しろよ」

「……」

 メルローズの沈黙を他所に、他のメンバーは気絶させた野盗達を縛り上げていた。

 こうして、街道を襲う野党の一つが壊滅した。パーティーは報酬の三千ガメルを受け取り、暫くの休息に入る。オルシチは……今度は恐らく極刑だろう。

 

 オルシチ達を官憲に突き出して一週間程経った、ある日の事、『風のささやき』亭の店主が、一人の男をパーティーに紹介する。

「実は皆様に、お願いしたい事があるのですが……」

「俺達に依頼か? まあ、内容と報酬次第だ」

 こうして、また新たな冒険が始まる。後に彼らは、この国を動かす波となる……。

 

 リック編第一章に続く

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